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以下に「SAI」と「HS」が生まれた理由を説明いたします。どちらも選ぶ気がしなくなるとおもいます。

●ベース車両は？
プリウスです。

●どこがプリウスと異なるのか？ （表面的な差異）
ボディ ＝ セダン
エンジン ＝ 1.8 → 2.4L
燃費 ＝ 35.5～38.0 → （SAI，HS）23.0km/L
サスペンション ＝ 安いトーションバー式 → 高いダブル・ウィッシュボーン式
プライス ＝ 205～327万円 → （SAI）338～426万円，（HS）395～535万円


に変わっています。特に大きいのは，燃費とプライスの差です。

●どうして燃費が異なるのか？
下記の5つの理由です

(1) プリウスは低抵抗車体（Cd＝0.25）
SAIとHSは，Cd＝0.27くらいでしょう。しかし10-15モードでは，空気抵抗がほとんど無関係で転がり抵抗が主体です。そう考えると，燃費は別の処にあります

(2) プリウスは電動ウォータポンプ
電動ウォータポンプにすると，暖機時間が早くなり，高速時のムダなポンプ動力を低減できます。SAIやHSは，このコストが高いため，通常のエンジン駆動のポンプです

(3) プリウスは排気熱回収システム
ハイブリッド車はエンジンが停止する頻度が高いため，暖機時間が長くなります。このため暖機時の燃料増加時間を短くするため，排ガスの熱エネルギをエンジン冷却水に回収し，暖機時間を短くする技術をプリウスは採用しています（エスティマ・ハイブリッドなども採用）。しかしSAIやHSはコストが高いので，採用していません

(4) プリウスはエアコン動力の少ないエジェクタサイクル
プリウスにはエアコン動力を30%くらい低減するといわれるエジェクタサイクルが搭載されています（理論的には怪しい）。しかしSAIやHSには採用されていません

(5) プリウスはEGRクーラ
通常，ディーゼルエンジンはNOx（窒素酸化物）が多く出るため，EGRクーラ（排ガスを燃焼室に戻すとき，エンジン冷却水で冷却するための熱交換器）を使います。これにより混合気の比熱を高くし，燃焼温度を下げ，NOxを減らせるからです。
ガソリンエンジンにEGRクーラを使うと，耐ノック性が高まり，圧縮比をあげられます。これにより燃費を改善できます。しかしSAIやHSには採用されていません

このうち，10-15モードは暖機後で，エアコンがOFF状態での燃費計測なので，上記の(2)と(5)だけが効いてきます。

●エンジンが大きさによる燃費への影響は？
重量が 1.35トン → 1.6トンとSAIやHSは重いので，エンジンも大きくなっています。しかしこの程度の重量変化による燃費への影響は，13%くらいです。つまり燃費では31～33km/Lです。23.0km/Lは悪すぎます。つまり上記(2)と(5)がSAIやHSに搭載されていないために燃費差があるとしても差が大きすぎます。

一方，エンジンを1.8Lから2.4Lにアップしていますが，エンジン内部のフリクションやスロットル開度によるポンプ損失を考えても，せいぜい2%くらいです。10km/Lもの差にはなりません。

いろいろ考えると，低燃費タイヤやエンジン制御などをいろいろあわせてプリウスは素晴らしい燃費を出し，一方，SAIやHSは，燃費改善のための搭載部品はできるだけ少なくしていることが分かります。

●SAIとHSの意味は？
これだけ燃費改善グッズを搭載しないで，プライスが100～200万円も高いクルマをどうしてトヨタは発売しているのでしょうか？ その理由は下記でしょう。

(1) プリウスの低抵抗車体は，コンサバの人には，ちょっと受け入れがたい ～ やっぱりセダンが良い
(2) プリウスの燃費は，いろいろな技術の搭載でたたき出した。このために大きな出費がある。その赤字を補填する車両が必要 → SAI，HSは，プリウス購入層よりもっと収入がある層を狙い，価格はプリウスの赤字を補填させる金額にする
(3) 燃費 23.0km/Lなら，1.5L車クラスの良燃費であり，38km/Lのような燃費を求めるユーザではない（十分，裕福なユーザがターゲット）
(4) プリウスとの車格は，エンジン排気量の差で出す

●まとめ
エンジンが1.8Lでも2.4Lでも10万円も違わないはずなので，多くの燃費改善グッズを不採用にしたSAIやHSの原価は，プリウスより安いでしょう。この安いクルマのプライスが100～200万円も高いというのは，トヨタ商法の勝利といえるでしょう。

それでも SAIやHSを選びますか？

簡単ですが，ご参考になれば幸いです。