56

view

まず200〜300万円クラスの車というのは、日本の各メーカーがとにかく安く作るために様々な知恵を結集して成し遂げられた価格ですから、デザインにこだわって作れる価格帯ではありません。安い車はそれだけ制限が多いということです。世界の車の多くが、豊富なオプションから自由に選んで発注できるのに対し、日本の車の多くはメーカーオプションがものすごく少ないですよね。これは生産効率を極限まで上げるためです。

しかしそれより少し上の価格帯になってくれば、世界の車の標準的な価格になってきますから、不可能ではないでしょう。ところが、車の価格というのは原価から割り出して設定されるものではありません。ものすごく高価な金型を、何台分の自動車生産に使用して償還するかなど、つまり何台売れると見込むかによって価格は変わってきます。多く売れると見込める車は、もともとの価格設定を低くすることが出来るのです。

スポーツカーは、そもそも実用的な乗用車と比べれば、昔から圧倒的に売れない車です。いくらNA型ロードスターが流行ったとはいえ、カローラの販売台数とは雲泥の差でした。つまり一般向けの車を作るメーカーは、少しでも多くの人に買ってもらえるような設計をせざるを得ないのです。トヨタのLFAは全く逆を行く考え方で作られた車でしょう。数少なく売る。そのため価格は高くなる。

スーパーカー的デザインの車を、誰もがこぞって買ってくれれば500万円を下る価格でも作ることは可能でしょう。しかし荷物が積めない、人が多く乗れない、段差でお腹がこすれる、気軽に通勤で使えない、営業車として使えないなどの車では多く販売できないでしょう。フィットやカローラが売れるのには、それなりの理由があるのです。