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ムスタングは｢スペシャリティカー｣というジャンルを作った車です。1960年代、リー･アイアコッカというフォードの重役が、当時のフォードの普通の車であるファルコンという車をベースにちょっと格好いいボディを載せて、エンジンや装備を細かく選べるようにした。それまでのアメリカ車の車種構成はとてもシンプルだったので、こういうやり方はとても新鮮だったんです。ターゲットは免許を取って間もない独身者や、子供がいたとしてもまだ小さい若夫婦。そういう人達に対して、｢どうせ乗るならカッコいい方がいいでしょ？｣とアピールしたわけです。

要はスポーツカーでも何でもないんですよ。フェラーリでもGT-Rでもないし、そもそもなろうともしていない。スタイリッシュなお買い物車、下駄なんです。今のモデルでもそれは変わりません。もちろんトップグレードはV8を積んでパワーがあるし、元レーサーのシェルビーがチューンしたモデルもありましたが、あくまでそれは一部のモデル。こんなんもありますよ、という選択肢のひとつでしかない。日本だとそんな一部のモデルにばかり目が行きがちで、それこそ２ドアクーペは走りに振っていないと存在自体が許されないから、理解しにくいでしょうけどね。CR-Xもレビ/トレもシルビアもみーんなアメリカでサンダル軽自動車として売るために開発されたのに、どうして日本人は目を血走らせてドリらないと気が済まないのか？謎です。

それ以前に、日本とアメリカでは道路の環境がまったく違うわけで。まっすぐで平坦な道をべーっと走るようにできているのがアメリカ車です。そんな車に日本のスポーツカーのような感覚で接しても大味なだけ。乗る側もその辺をわかって乗る必要がありますね。