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●状況
車両＝ホンダ ビート
不具合＝冷房能力不足
低圧側配管＝水滴がついている

●原因調査
まず下記を調べましょう。信頼の置けるディーラにて，圧力計が2個付いたゲージ･マニフォールドというもので低圧側圧力，高圧側圧力を計測します。

条件：
ドア＝全開
ブロワファン＝最高
温度設定＝最低
内外気切り換え＝内気循環
エンジン回転数＝1500rpmくらい

・低圧側圧力 … 1.8～2.0キロ（kgf/cm2）＝ 0.18～0.2MPaゲージ
・高圧側圧力 … 14～17キロ（kgf/cm2）＝ 1.4～1.7MPaゲージ

ここで「ゲージ」とは「ゲージ圧力」のことで，大気圧＝0MPaになります。つまり絶対圧力0.2MPaであれば，ゲージ圧力は0.1MPaになります（大気圧分が0.1MPaなので）。

●原因推定
おそらく，下記のようになっているはずです。

・低圧側圧力＝1.0～2.0キロ
・高圧側圧力＝12キロ以下

このような場合，冷媒漏れです。

●この状態では？
低圧は十分，低いので，低圧配管に水滴が付きます。しかし冷媒流量（質量流量）が少ないので，空調風を十分冷却できません（冷媒温度は低くても）。このため冷房能力不足になっています。

●吹出温度9℃
よく冷えるエアコンの場合，5～10℃くらいなので，十分，冷えている冷風と言えます。この場合，内外気切り換えを「内気循環」にしてください。

●冷媒漏れへの対策は？
よくガソリンスタンドなどで冷媒を追加充填される方がおられますが，間違っています。下記の手順でお願いいたします。

★漏れやすい個所は？
下記の4種類です。

(1) 配管継手 … 熱交換器と配管の継手 → Oリングを交換。Oリング装着時，必ずコンプレッサ・オイルを十分，塗布してください。まだ締結時は，規定トルクを守るように。力一杯しめると，配管に亀裂が入ります。またシール方法は，軸シールといい，締め付けトルクとは無関係です。このため規定トルクを絶対に守るようにしてください

(2) コンプレッサの回転軸シール … コンプレッサの軸シールはリップシールが使われています。ここの不良の場合，リップシールだけを交換できるのですが，一般のディーラ，電装屋さんではムリです。このためリビルト品へ交換をご検討ください。大きな出費なので，もし車両の使用予定があまり長くないなら，そのままお使いください。

(3) フレキシブル・ホース … ホースは複層の材料が使われていますが，こすれたりすると，漏れることがあります。もしホースの漏れ個所を見つけたときは，こすれないように，周囲部品との接触が起きないようにしてください

(4) 熱交換器のチューブあるいはタンク … 補修ができません。リビルト品への交換をご検討ください

★冷媒回収
冷媒回収器で全量を回収します。大気放出は法律違反です（温暖化防止のため）。

★真空引き
真空引きし，真空ポンプをとめてから少なくとも10分間は，圧力計が動かないことを確認します。

★冷媒充填
規定量を充填します。この時，早く入れようとして，サービス缶を加熱してはいけません。もし加熱するなら，ぬるま湯（40℃以下）をお使いください。

●どうして追加充填はダメなのか？
規定量は，たとえば，下記のようになっています。

350g±50g

正規の充填量は，範囲が狭いので，追加充填すると，本当の充填量がわからなくなります。もし過剰に入れると，冷媒過多によるトラブルがあります。たとえば，冷房能力不足やコンプレッサ駆動力アップによる燃費悪化です。このため現在の車両では，追加充填できなくなっています。

●ケミカル添加剤は？
使ってはいけません。もし使って，何かコンプレッサ焼付きなどのトラブルになった場合，コンプレッサを回収し，本来，あってはいけない成分を発見すると，費用はすべてユーザ側になります。
また効能は技術的におかしく，効果はまったくありません。

簡単ですが，ご参考になれば幸いです。